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御嶽山御嶽神明社 「おんたけさん」で親しまれる、2つの信仰が融合した神社。

御嶽山御嶽神明社 神社外観

日本で最高位の神とされる天照大御神。その天照大御神をお祀りする伊勢神宮を中心とした信仰を「神明信仰」と呼び、一般的に「お伊勢さん」などの呼び名で親しまれています。そんな神明信仰と、御嶽山の御嶽信仰が合わさった神社が、ここ御嶽山御嶽神明社です。

近年の研究では約1200年前からの歴史があると考えられており、地域の人々から「おんたけさん」の愛称で呼ばれています。自然豊かな東北地方の神社ならではの、美しい植栽や野鳥などを観測することができ、参拝に来られる方々にとって憩いの場となっています。

そんな御嶽山御嶽神明社の魅力について、宮司様に直接お話を伺い、神社の歴史からこの先の未来への思いを語っていただきました。

目次

御嶽山御嶽神明社とは

御嶽山御嶽神明社 社殿

近年の研究で、奈良時代の天平神護2年(766年)に、神様がご鎮座されたと考えられており、1200年以上の非常に長い歴史を持つ神社です。もともとは「神明社」という名称で、神明信仰のみでしたが、明治39年より、長野と岐阜にまたがる霊峰「御嶽山」より御分霊をいただき、御嶽信仰が加わりました。

その社殿は、神明信仰を象徴する神明造で、伊勢神宮では見ることができない本殿の姿も、この神社では希望があれば一般の方でも目にすることができ、神明信仰の特色を見ることができます。また、地域の特産品であるお餅に関連した行事もあり、地域住民との積極的な交流も伺えます。

雄大な自然に囲まれた気持ちの良い境内で、気持ちを新たにしながら神様への祈りを捧げることができる神社です。

【御嶽山御嶽神明社 特別インタビュー】

境内に合計7つのお社を持つ御嶽山御嶽神明社。「七社めぐり」と称して、すべてのお社を回っていただける取り組みを行っています。それぞれのお社で御朱印を出しており、1つの境内で多くの御利益を受けることができる、珍しい神社です。

山岳信仰由来の「火渡祭」というお祭りも行われ、一般の方も多く参加されています。地域の方々と伝統文化を大切にしながら、新しい試みにも取り組まれ、神社を未来に残していけるよう、尽力されています。

雄大な自然に育まれてきた、約1200年の歴史。境内での「七社めぐり」も楽しめる。

編集部

本日は、岩手県一関市にご鎮座されている御嶽山御嶽神明社様へのインタビューです。まずは、神社のご由緒からお聞きできますか。

宮司様

当社は、岩手県一関市花泉町に鎮座しており、地域の方々から「おんたけさん」の通称で親しまれています。近年の研究においては、奈良時代から東北の重要な場所にお祀りされていた可能性も指摘されており、非常に長い歴史がある神社だと考えられています。また江戸時代の記録『峠村風土記』には当社の名が登場しており、近年の研究では、奈良時代の天平神護2年(766年)に、現在の地に神様が鎮座されたという説が指摘されています。

編集部

非常に長い歴史がある神社なのですね。神社名にある「御嶽山」というのは、長野県と岐阜県にまたがる、全国的にも有名なあの御嶽山でしょうか。

宮司様

はい。御嶽山は、長野県と岐阜県にまたがる約3000m級の霊峰です。江戸時代までの神社名は御嶽山の後に続く「神明社」のみで、伊勢神宮と同じ天照大御神様をお祀りしていましたが、明治39年に御嶽山から御分霊をお迎えし、御嶽信仰が加わりました。そして、昭和20年に「御嶽山御嶽神明社」という名に改称いたしました。決して大きな神社ではありませんが、初詣などの行事はもちろん、病気平癒などさまざまな御利益を広く知っていただいています。

編集部

では、こちらの神社の見どころや魅力はどういった部分でしょうか。

宮司様

まずは、その長い歴史です。先ほどもお話したように、江戸時代の頃にはすでに存在していたことが分かっていましたが、近年の研究で約1200年の歴史があると考えられており、その歴史の中でさまざまな出来事を見てきた神社です。また、これは東北地方全体に言えることですが、豊かな自然に恵まれているという点も特徴です。境内には四季折々の植栽が見られ、たくさんの種類の野鳥も遊びに来るため、いつも野鳥の可愛らしい声が聞こえてきます。植栽の種類も非常に豊かで、春のウメ、ツバキに始まり、4月にはサクラが見頃を迎えます。スミレやスズランの時期を終えると、夏のアジサイ、ヒガンバナなどが色づきます。秋にはキク、サザンカが咲き誇り、一年を通してさまざまな植栽に出会うことができます。

編集部

ホームページでも植栽と野鳥の写真を拝見しました。本当にさまざまな動植物に出会うことができるんですね。野生動物も遊びに来ると拝見しました。

宮司様

そうですね。ニホンリスやニホンカモシカなどが境内に遊びにやってくることがあります。ニホンカモシカはよく神社の階段を上ったりしています。

編集部

豊かな自然に囲まれているこの地域ならではの魅力ですね。

宮司様

また、多くの神社でも同様かと思いますが、境内には御嶽山御嶽神明社以外に、6つのお社があり、合計で7つのお社を巡っていただくことができます。それにちなみ、「おんたけさん七社めぐり」というお参りを実施しています。それぞれのお社で御朱印も出しており、広大な境内ではありませんが、ご来社いただいた方には七社めぐりを楽しんでいただいています。最後の1つは、お社ではなく大きな石です。この石の模様がハート型になっており、「ハート石」という名称で親しんでいただいています。こちらも近年、注目されている部分です。

御嶽山御嶽神明社 ハート石
編集部

ハートの模様がある石というのは可愛いですね!7つのお社すべてで御朱印をご用意されているというのも珍しいと思います。こちらに参拝した方は、一度に7つの御朱印を集めることができるんですね。

宮司様

また、お祭りでは御嶽山の山岳信仰由来の行事が多く、秋のお祭りでは「火渡祭」という神事があり、火を炊いた後に、白装束を纏った行者と一般の方々が一緒に火渡しをするという行事もあり、そちらも特色の一つかと思います。

地域の特産品を活かした「一升餅」の行事も。地域との交流を絶やさない神社。

編集部

では、地域の方とともに行われている行事などはありますか。

宮司様

当社から2㎞ほど離れた所に市民センターがあるのですが、そちらに地域の方が集まり、そこから当社へ歩いてお参りに来ていただくという行事を実施しています。通称を「歩け歩け大会」と呼んでおり、この地区にもう1つある神社と、一年おきに交互でお参りしていただいています。ほかに、3月上旬には火災予防週間として、3月最初の土曜日に、消防団の皆さんが火災予防の御祈願に来られます。その際には、祝詞を読む祝詞座の前にある護摩壇で護摩焚きをしており、火災予防祈願という形で御祈祷をさせていただいています。

御嶽山御嶽神明社 歩け歩け大会
宮司様

また、全国的に1歳の誕生日を迎えたお子さんに、一升餅を背負わせて歩いてもらうという風習がありますよね。この一関市は町の特色としてお餅文化を掲げています。そのため、年中行事においてもお餅やお団子をついて食べるという風習が残っています。そういった背景から、各ご家庭で行われていた一升餅の行事を、神社で行っています。本来は、1歳の誕生日辺りに行う行事ですが、当社では5月5日の子どもの日に、1歳のお子さんとそのご家族に、神社に集まっていただき執り行っています。

御嶽山御嶽神明社 一升餅
編集部

ホームページにも、とても可愛らしいお写真がありますね。参加人数も年によっては20人以上が参加されている年もあり、とても好評の行事なんですね。

宮司様

ときには、1人のお子さんに対してご両親だけでなく両家の祖父母や親族の方など、総勢10名ほどで来られる方もいて、それが3組集まると30名ほどになるので、その日はとても賑わいがあります。コロナが流行する前は、1つの時間帯だけで行っていたのですが、コロナの流行をきっかけに、密集を避けられるよう、午前9時半~、10時半~、11時半~と、時間をいくつかに区切って行っています。

編集部

それは、親御さんにとってもありがたいですね。少子化の時代ではありますが、こういった子どもさんが主役になる行事は大切にしていきたいですね。この一升餅の行事はどれくらい前から行われているのでしょうか。

宮司様

こちらは平成21年から実施しており、新しい行事ではありますが、20年近く続いています。いつも多くの方にご参加いただき、ありがたい限りです。地域の方には、我が子が1歳になったら参加する行事として親しんでいただいていると思います。ほかに、お正月には、地域の野球部の皆さんが必勝祈願に来られることもあります。

伊勢神宮と同じ神明造の社殿。伝統の「雅楽」文化も継承。

御嶽山御嶽神明社 雅楽会
編集部

では、神社建築において特徴的な部分はありますか。

宮司様

社殿は、神明社ということもあり神明造で、伊勢神宮と同じ造りです。かつてはお宮がなく屋根と柱だけの場所で拝んでいた時代があり、遺跡などにお祭りの風景が描かれていることもありました。神明造には、屋根と建物がありますが、当社は今でも両端に柱があります。現在では、その柱がなければ社殿の強度に支障があるというわけではないのですが、かつてのお祀りの名残が残っているといわれています。そして、当社の本殿も神明造の両端に太い柱があります。伊勢神宮のご本殿は大変神聖なものですので、特別な機会がない限り、一般の方がそれを間近で見ることはできないと思います。ですが、当社ではご希望があればご覧いただくことができますので、伊勢神宮の神明造がどういうものなのか、イメージすることもできるかと思います。以前、皇學館大学の先生が訪ねてこられたときもご覧いただき、神明造であるということは確認していただいています。建築部分での特色としては、そういった点があるかと思います。屋根は伊勢神宮のような茅葺屋根ではなく、銅板葺きですが、両端の柱は棟持ち柱(むなもちばしら)という柱で、こちらも伊勢信仰らしいお社の特色かと思います。

編集部

では、境内に見られる7つのお社、それぞれにお祀りされている神様はどういった神様でしょうか。

宮司様

まず1番目はこの御嶽山御嶽神明社です。天照大御神様をお祀りし、ほかに御嶽山の御嶽大神をお祀りしています。御嶽山の神様は3柱いらっしゃるとされており、国常立尊(くにのとこたちのみこと)、大国主命として知られる大己貴命(おおなむちのみこと)、少彦名命(すくなびこのみこと)をお祀りしています。

宮司様

大己貴命と少彦名命がいずれも山の神様ですので、山の神社では、一緒にお祀りしている神社は多いと思います。そして、2番目は皇子社(おうじしゃ)というお社です。こちらは言い伝えでは、出羽三山を開山した蜂子皇子(はちこのおうじ)という神様をお祀りしていると伝わっています。ただ、こちらの皇子社はもともと地区の市民センターの近くに王壇(おうだん)遺跡というものがあり、その遺跡近くに祀られていたものです。王壇遺跡は、南北朝時代の皇族様がそこで亡くなられたという伝承があり、その由来も考慮する必要がありますが、現在の伝承では、出羽三山を開山した蜂子皇子がご祭神となっています。3番目は稲荷社で、こちらはお稲荷様である宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)をお祀りしています。4番目は甲子社(きのえねしゃ)で、大黒様である大国主神と、えびす様として知られる事代主神をお祀りしています。そして5番目の祖霊社(先人顕彰社)は、地域の先人や、御嶽山を信仰していた方々のご先祖などをお祀りしています。6番目は伊邪那岐社(いざなぎしゃ)です。こちらのご神体はもともと男根で、子宝などに御利益があると言われています。7番目は先ほどお話したハート石の磐長姫社(いわながひめしゃ)です。

編集部

詳しくありがとうございます。子宝や五穀豊穣の神様など、訪れた方はさまざまな御祈願をすることができますね。また、ホームページでは雅楽継承の記事も拝見しました。こちらは神社で取り組まれているのでしょうか。

宮司様

こちらは平成27年頃から取り組んでおり、毎週1回集まって練習しています。近年参加者が少し減少傾向ですが、当社では雅楽をなるべく演奏するように心がけており、例祭では朝日舞という舞を奉納しています。現在も無くなったわけではなく、継続して雅楽の継承に取り組んでいます。また、一関市と、宮城県の栗原市は同じ南部神楽の地域であり、県を超えて同じ伝統文化を共有しています。こうした地域を超えた伝統文化の共有、継承もあれば、各コミュニティで守ってきた伝統文化もあり、それぞれを地域全体で工夫をしながら守っていくことが大切だと思っています。

編集部

雅楽を経験できる場所はとても貴重だと思いますので、もっと知られてほしいですね。

宮司様

神社としてもよりPRできるよう尽力していきたいと思っています。

有事の際への備えでSNSも積極活用。人口減少にも負けない、PR活動を。

編集部

岩手県はやはり雪も降るかと思いますが、冬場の神社周辺環境はいかがでしょうか。

宮司様

冬場はやはり雪が降りますが、太平洋側ですので多いときで50㎝ほどくらいです。積雪量は年にもよりますが、暖冬の影響もあり昔ほど降ることはあまりありません。神社としては、雪が降った際には神社前の坂に融雪剤を撒くこともありますが、用意した融雪剤が余る年もあります。ただ、近年、青森県などでは観測史上最大の積雪量を観測したこともありますので、この地域だけではなく東北地方全体でどれくらい雪が降るかを見て、備えておくことが大切です。

編集部

SNSでの発信も積極的にされていますね。

宮司様

SNSの運用は、2011年の東日本大震災の後に始めたものです。普段は、四季折々の行事や自然の風景などを発信していますが、災害時に役立つツールとして、SNSを活用した方が良いのではないかと考え、現在はFacebookとインスタグラムでの発信を続けています。災害が起きたときには、まず電気が止まります。停電になると、なるべく電力を必要としないラジオなどに情報源を頼ることになります。そして、停電から電気が復活し情報が少しずつ入ってくるようになりますが、その際に得られる情報はできるだけ多い方がいいので、SNSをもっと活用できていれば…という当時の反省点から始めたものです。

編集部

あの震災を経験された地域の神社ならではのお考えですね。御守りもたくさんの種類を頒布されていますね。

宮司様

こちらは、参拝に来られた方の「こんな御守りがあったらいいのにな」というお声をヒントにして少しずつ種類を増やした次第です。どの種類も、多くの方にお求めいただいており、皆さまにとって御利益があれば嬉しく思います。

今後の展望

秋祭りでの火渡祭は2026年で46回目を迎え、この先も長く続けていきたいと思っています。節分の際には、釜鳴神事(かまなりしんじ)という神事があり、節分祭は当社の行事では最も参列者が多い行事です。小さな神社ですが、伝統行事は大切にしていきたいと思っています。また、火渡祭をPRするキャラクターとして、「御嶽姫」というキャラクターを漫画家の先生に描いていただき、昨年からPRしています。

東北地方は人口減少、高齢化が進んでいる地域ですが、これからを担う若い皆さんにも受け継いでいきたいと思っていますので、伝統文化行事は大切に取り組んでいきたいと思っています。

インタビューまとめ

伊勢神宮と同じ神明信仰と御嶽信仰が合わさった神社というのは全国的にも珍しく、私もその歴史に非常に興味を持ちました。歴史的な信仰を継ぐことはもちろん、さまざまな伝統文化も受け継がれている姿は、地域の方にとっても安心できるものだと思います。

また、SNSを活用される理由において、「有事の際に役立つことがあれば」という思いをお持ちなのは、この地域の神社だからこその思いです。未曾有の事態となったとき、1つでも地域の人々にとって頼れる場所でありたい、宮司様からそんな思いを感じました。

地域のことを心から思い、伝統を受け継ぐこの神社は、この先も花泉町にとって、欠かせない神社として新しい歴史を刻んでいくことでしょう。

御嶽山御嶽神明社

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この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

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