MENU

日和佐八幡神社 ウミガメと伝統を守る、地域愛あふれる神社。

雄大な自然に囲まれた神社は国内にも多くありますが、この日和佐八幡神社を取り囲む自然は少し違っています。神社のすぐそばに広がる大浜海岸には昔からアカウミガメが上陸し、産卵する様子を見ることができます。野生のウミガメを見ることができる地域は日本でも数少なく、神社では亀をモチーフにした御朱印を頒布するなど、亀とのご縁を大切にしています。

また、神社では秋祭りの「ちょうさ(太鼓屋台)」が全国的に有名で、県外からも多くの人が見に来られます。広い境内には多くの摂社・末社が立ち並び、安産や交通安全だけでなく、学業成就や漁業・商業の繁栄などこの神社に来るだけで数々のご利益を受けることができます。この神社に受け継がれてきた伝統行事や町の魅力について、神職の方にお話をお伺いしました。

目次

日和佐八幡神社とは

今から約700年前、日和佐八幡神社はこの地に鎮座し美しい自然が息づくこの町で守られてきました。その自然は今も壊されることなく残り、全国でも貴重な野生のウミガメが上陸する場所となっています。その光景を一目見ようとこの地を訪れる方も多く、神社だけでなく同じ大浜海岸に位置する「日和佐うみがめ博物館カレッタ」と合わせて楽しまれています。

江戸時代から続く有名なお祭り「ちょうさ」はこの地域にとって必要不可欠であり、県外へ出て行った方でもこのお祭りの時期だけは必ず町に帰って来るという方もいるほどです。幼い頃から地域のお祭りに親しみながら育った人々が、次の世代にもお祭りを繋ごうと懸命に守り続けています。

地域外の方にもお祭りをはじめ神社の魅力を知ってもらうため、SNSでの発信も積極的に行っています。

【日和佐八幡神社 特別インタビュー】

ウミガメ①

大浜海岸に昇る美しい初日の出。その初日の出を見ようと海岸を訪れ、神社へ初詣に向かい神へ祈願をする。そして近隣の寺院で厄祓いを行い、自然に囲まれて心身共に新たな気持ちで一年を始めることができる。この場所はそんな特殊なロケーションです。

ですが、国内にはまだこの地を知らない人も多く、神社としてこの地の魅力を伝えるためにできることに日々尽力しています。今回のインタビューでは、神社としての思いだけでなく、町の人々が一丸となってこの地域の素晴らしさを残していこうと尽力している様子をお届けします。

ウミガメと「ちょうさ」を守る。8つの町が魅せる伝統行事。

編集部

徳島県海部郡美波町に鎮座されている、日和佐八幡神社様へのインタビューです。こちらは「かいふぐんみなみまち」とお読みするのでしょうか。

神職様

そうです。この町は海、山、川の全てが揃っている町で、特に当社のすぐ横に大浜海岸という海岸が広がっておりそこには昔からアカウミガメが上陸し産卵することで有名です。また、四国八十八ヶ所霊場の二十三番札所になっている薬王寺(やくおうじ)というお寺は厄除けで有名で、多くの方が訪れています。また、当社の特徴の一つでもありますが、お祭りで見られる太鼓屋台の「ちょうさ」が有名な町でもあります。

編集部

雄大な自然と、伝統行事が息づいている町なんですね。では、こちらの神社の歴史をお伺いします。創建時期はいつ頃でしょうか。

神職様

始まりは1351年とされています。その年の棟札(むなふだ=建物の新築・修理時に建築年月日などを記した木製の札)が残っているので、間違いなくそれより昔からあったのだと思いますが、現在の日和佐八幡神社として成立したのはその辺りだろうと考えられています。現在から700年近く前のことになります。御祭神は誉田別命(ほんだわけのみこと=応神天皇)、息長足姫命(おきながたらしひめのみこと=神功皇后)、神武天皇の母である玉依姫命(たまよりひめのみこと)の三柱の神様をお祀りしています。御神徳は安産や厄除け、交通安全、学業成就などさまざまなご利益をお受けいただけます。

編集部

詳しくありがとうございます。では、皆さんにぜひ知ってほしいこの神社の特徴や魅力はどういった部分でしょうか。

神職様

まずは冒頭にお話した隣の大浜海岸です。夏にはウミガメが上陸するなど、ウミガメと非常に縁のある神社です。ウミガメは砂浜に産卵し、海へと帰っていきますのでそういったご縁から当社も安産祈願を受けていただけます。

編集部

ウミガメが見られる場所は本当に貴重だと思います!日本でもなかなか無いのではないでしょうか。

神職様

珍しいと思います。大浜海岸には「日和佐うみがめ博物館カレッタ」というウミガメの博物館もあり、そちらでは一年中ウミガメを見ることができます。2025年の7月に大規模なリニューアルを行ったので、かなり多くの方が来館されていました。そういった亀と縁が深い神社ですので、社殿の彫刻にもあちらこちらに亀の彫刻が施されており、参拝いただいた際にはそういった彫刻も探していただければ面白いかもしれません。カレッタにはウミガメの飼育プールもあり、本当にウミガメと共に生きている土地です。

編集部

皆さん、神社に限らず周辺環境と合わせて楽しまれているんですね。

神職様

また、秋祭りで見られる各町の太鼓屋台がとても有名で、四国地方ではそれを「ちょうさ」と呼んでいます。現在、この町の人口は5600人ほどですが、8つの町内会それぞれがちょうさの屋台を持ち、合計で8台の屋台を持っているのは徳島県内でも非常に珍しいことです。

<ちょうさ③~⑥の写真>

編集部

「ちょうさ」という名称の由来は分かっているのでしょうか。

神職様

これは色々な意味合いがあり、ハッキリと分かっていないんです。ホームページでも特集ページを作っていますが、この地域では本当に重要なお祭りです。このお祭りがあるので、県外へ出て行っても「祭りの時期だけは必ず帰って来る」という若い方もいらっしゃいます。

編集部

それはすごいですね!本当にこの地域にとっては無くてはならない行事ですね。ちょうさ(屋台)の担ぎ手はやはり若い方が多いのでしょうか。

神職様

そうですね。各町でちょうさ(屋台)を担ぐ人を太鼓若連中と呼ぶのですが、厳密なルールではちょうさの運行を指揮する責任者は35歳の人と決まっているんです。ただ、最近では少子化などの影響もありそのルールどおりにはできないので、その年代に当たる方がいない場合もあり、もう少し若い年代の方や逆に40歳を過ぎた方が担っている場合もあります。ルールどおりにはなかなかいきませんが、おおよそ30代の若い方がトップを仕切るのが当社のちょうさ運行の伝統です。

編集部

そういったルールもあるんですね。その年代の方はやはりそういう意気込みでお祭りに臨まれているのでしょうか。

神職様

そうだと思います。責任者はその町の顔にもなりますから、きっと一層気合が入るのではないかと思います。

編集部

ホームページでちょうさのページを拝見していますが、法被も各町によって違うようですね。こちらは各町で作成されているのでしょうか。

神職様

法被のデザインは各町にお任せしており、一度作ってからずっと変えていない町もあれば、幾度もリニューアルしている町もあり、それぞれの町の特徴を見ることができ、お祭りの面白い部分でもあります。このお祭りには地域外はもちろん、県外から来られる方も多く、地域のみならずお祭り好きな方にとっても見応えのあるお祭りだと思います。ちょうさにちなんだオリジナルキーホルダーもあり、これは各町の法被をモチーフにしたものです。

編集部

お写真を拝見しました!とても可愛らしいデザインで、町の方なら自分の地域の物が欲しくなると思います!ちなみに、このちょうさはいつ頃から始まった行事なのでしょうか。

神職様

最も古い地域のもので230年を迎えましたので、江戸時代後期頃から始まったものです。元々は大阪の堺地区に由来しているものなんです。当時、廻船問屋の大豪商がこの日和佐にいて、こちらからは薪や炭を大阪へ持ち込み財を成していました。その縁で大阪からこうしたお祭り文化が持ち込まれたと言われています。以前、堺の百舌鳥(もず)の名誉宮司さんとお話する機会がありました。その方がおっしゃるには、江戸時代後期はやはり非常に平和で穏やかな時代で、大阪や関西方面との往来も多かったそうです。大阪としてはお金が出て行くばかりでは困るということもあり、大阪から輸出する一大産品ということで、ちょうさなどが西日本を中心に広がっていったそうです。兵庫県の播州地方や瀬戸内、四国では愛媛などにもお祭りがありますので、徳島にもその流れで伝わったのだと思います。

編集部

担ぎ手の方は何人ほどいらっしゃるのでしょうか。

神職様

お祭りの中でも一番のメインは大浜海岸を練り歩き海に入る場面なのですが、その際には60人ほどの方が担いでいます。

神職様

みんな自分の町の屋台が一番だと自信と誇りを持ってお祭りに臨んでいると思います。このお祭りの様子は、当社で出しているカレンダーにも写真を載せていて、カレンダーに載せる写真のフォトコンテストも15年ほど前から行っています。毎年200点ほどの応募があり、どれも魅力的なお写真です。また、お祭りを始める前には昨年のお祭りからこの日までに生まれた赤ちゃんのお祓いをする神事もあります。

編集部

ホームページにも打掛を羽織った赤ちゃんのお写真がありますね。とても可愛いです。お祭りは雨天決行なのでしょうか。

神職様

そうですね。もちろん台風などの影響で順延することはありますが、少々の雨であれば実施しています。徳島は一年間が阿波踊りのためにあると言われていますが、この地域はお祭りのためにあるという感じです。実はこのちょうさ(屋台)の担ぎ手は、地域の人口が減少している影響もあり、町外から募集もしています。

編集部

そうなんですね!地域外からも担ぎたいと来られる方は多いのでしょうか。

神職様

直近ですと、地元の徳島文理大学と国立の徳島大学の留学生の方たちが手伝ってくれました。なかなか外国の方はお神輿や屋台を担げる機会がないですが、当社では人手が足りていた頃から地域外の方や海外の方にもちょうさ(屋台)などを触っていただけるよう配慮しています。他にも地域の独立リーグの徳島インディゴソックスという野球チームの選手の皆さんや、県庁の職員さんが来てくださっています。本当に色んな方の力をお借りして成り立っているお祭りです。

お祭り参加への”下準備”も。地域の伝統に自信と誇りを。

編集部

では、神社で行われている行事でこちらの神社ならではのものはありますか。

神職様

境内で年に4回、3ヶ月に一度マルシェなどを開催しながら、子どもたちが太鼓を叩ける場を提供しています。子どもたちに太鼓を叩いてもらう機会としては、子ども太鼓教室を開催し、主に小学4年生~6年生の子どもたちに参加してもらっています。中学生になるとほとんどの子どもたちがお祭りで太鼓を叩くことになりますので、それまでに練習をしてもらうというイメージです。

編集部

しっかりと下準備をされているんですね!やはりお祭りが盛んな地域は違いますね!地域の子たちにとっては太鼓を叩けることが誇りなんですね。

神職様

やはり先輩たちが叩いているのを小さい頃から見ているので、自分たちにとって憧れの存在になっていると思います。

神職様

他に、神社のお祭りではなく町のお祭りですが、海の日の前々日に「うみがめ祭り」という行事も開催しています。これは地域に親しまれているウミガメに感謝するお祭りです。日和佐川の河川敷では花火大会なども行われ、町全体がとても賑わうお祭りです。

編集部

伊勢神宮への新穀感謝祭というものもあるようですね。

神職様

これは、11月に当社の氏子総代さんたちと共に希望者を募って伊勢神宮にお参りに行くものです。年間を通して多くの行事を執り行っていますが、やはりお正月の人出が一番多いと思います。大浜海岸はこの辺りでは初日の出のメッカになっているので、お正月には日和佐太鼓創作会の皆さんが初日の出をバックに和太鼓を演奏して日の出を祝う行事も行っており、遠方から来ていただける方もいます。初日の出を見た後は、当社へ初詣にお越しいただき、福餅をお分けしています。また、冒頭にお話した薬王寺さんで厄を落とし、海岸ではウミガメを見ることもできるなど、お正月に関する全てのご縁が完結する場所なんです。

編集部

海岸から見る初日の出、きっと美しいでしょうね。

数々の摂社で多くのご利益を。SNSでの魅力発信も積極的に。

編集部

インスタグラムではご刻印プロジェクトに参加されている旨も拝見しました。こちらはいつから参加されているのでしょうか。

神職様

ご刻印プロジェクトは3年ほど前から参加しています。インスタグラムにアップしている紫色のものは2025年限定のもので、専用ケースもご用意しています。このご刻印を目当てに来られる方も大変多く、ほとんどがライダーさんですがこうしたことをきっかけに訪れていただけるのは本当にありがたいです。当社は道路沿いからもとても入りやすい場所に位置していますので、ライダーさんも訪れていただきやすい立地です。

編集部

こちらの神社は境内もかなり広く、末社や摂社も多いようですね。

神職様

境内には蛭子神社、天神社、加茂神社、淡島神社、道祖神社、護国神社という6つの神社があり、それぞれのご利益を受けていただけます。蛭子さんは、大阪では商売繁盛の神様ですが、この地域では漁業の神様として知られています。淡島神社と言えば、和歌山の人形送りで有名ですが当社でも8月に人形供養を境内で行っています。当社に来ていただければ多くのご利益を受けていただけるので、お参りが完結するというのも特徴です。

神職様

また、美波町は徳島県の中でもサテライトオフィスの進出が目覚ましい地域です。都心や関西方面からサテライトオフィスで移住してくださる方も多く、そういった方々がちょうさの若連中の責任者として活躍してくれることもあります。その中にイラストレーターの方と親しくなり、2ヶ月に1回ほどのペースで特製の御朱印を作っていただいています。そういったこともSNSなどで情報発信していきたいと思っています。

今後の展望

代々受け継がれてきたお宮やお祭りを、何とかして次の世代に繋いでいくことが、この時代に生きる私たちの使命だと思っています。そのためにやれることは全てやっていきたいです。地域には氏子青年会もあり、年末には注連縄を作り飾り付けてもらっています。そうしたご縁をこれからも繋げていきたいです。時代の波に負けず、この先も神社を美しく残せるよう尽力していきたいです。

インタビューまとめ

数多くの神社様へインタビューを敢行してきましたが、野生のウミガメに出会えるという神社様は初めてでした。大浜海岸に広がる美しい海は訪れる人々の心を穏やかにし、ここへ来て良かったと思わせてくれるでしょう。

徳島県と言えば、鳴門の渦潮や阿波踊りが有名ですが、ここにも一度は訪れるべき素晴らしい観光スポットがあります。「知る人ぞ知る観光地」ではなく、誰もが知る観光地へ。この美波町がそんな場所になることを願います。そして、この地を訪れた際にはその自然だけでなく、日和佐八幡神社へも足を運び多くのご利益を受け、受け継がれてきた伝統に少し触れてみるのも良いのではないでしょうか。

日和佐八幡神社

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

コメント

コメントする

目次