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新居関所 幕末期の建物が唯一残る、江戸を護った重要な関所。

新居関所の外観

江戸時代の東海道における重要な関所と言えば、箱根関所・新居関所(今切関所)・気賀関所(厳密には東海道から分かれた本坂通、通称・姫街道の関所)の3か所です。いずれも江戸へ続く重要な街道に設けられた関所であり、そのいずれも現代においても復元した建物(復元を含む)などを見ることができます。裏を返せばそれは、後世に伝えるだけの価値と意味のある重要な建物だったということでもあります。

今回は東海道と付属する街道(姫街道)に所在した3か所の関所のうち、新居関所の史料館ご担当者様へお話をお伺いしました。関所設置の背景からその歴史、当時行われていたお調べ(取り調べ・改め)の内容や現在行われている行事に至るまで、詳細にお話いただいた内容をご紹介します。

目次

新居関所とは

関所内観の写真

徳川の世・江戸時代に各地に創られた関所。その役割は、人や物の移動を取り締まることでした。「入り鉄砲に出女」という言葉があるように、大名の妻子である女性の逃亡を防ぐ「女人禁制」や鉄砲などの武器の持ち込みを禁止することで、江戸の世の治安維持に大きな役割を果たしていました。

その姿は江戸の世の終りと共に少しずつ失われていきますが、重要な関所であった建物は現在も保存され公開されています。その内部では当時使われていた道具や、行われていたお調べ(取り調べ・改め)の様子などを知ることができ、当時の人々にとって関所がどんな存在であったのか、その様子を窺い知ることができます。

さらにこの新居関所は国内で唯一、幕末期に建て替えらえた建物が現存している関所でもあり、その価値はとても貴重なものです。その貴重な姿を多くの方に見てもらおうと、関所では訪れた方々が楽しめるような行事も多く行われています。

【新居関所史料館 特別インタビュー】

浜名湖岸に位置していた新居関所ですが、現在では湖岸に位置していたことが分かるように船着場(渡船場)・護岸と構内にあった建物などの一部が復元されています。

隣接する関所史料館では関所に関する資料だけでなく、当時の人々がどんなふうに旅をしていたのか、その記録なども展示されています。この先も関所構内にあった船会所や土蔵などの復元整備が計画されており、当時の様子をより詳細に知れるようになるかもしれません。

幕末期の建物も現存。隣接の史料館で展示公開も。

編集部

静岡県湖西市に位置する新居関所史料館様へのインタビューです。まず、この新居関所とはどういう場所であったか、その歴史などをお聞きできますか。

ご担当者様

慶長5年(1600)に天下を統一した徳川家康は江戸を中心として東海道などの交通路を整備し、江戸の防衛のため各街道の要所に関所を設け、「入り鉄砲に出女」といわれるように通行者に厳しい取り調べを行いました。新居関所は、東海道の浜名湖岸(今切)に慶長5年(1600)に設置され、自然災害により2度移転し、宝永5年(1708)に現在地へ引っ越しました。その後、幕末の嘉永7年(1854)の地震によって関所構内の建物等は倒壊したため、現存する関所建物は安政2年(1855)から安政5年(1858)にかけて建替えられたものです。現在の建物は関所が廃止された明治2年(1868)以降、小学校や役場などに利用され、昭和46年(1971)には建物の半解体修理が行われて現在に至っています。

編集部

では、この関所の特徴や見てほしい部分はどういった点でしょうか。

ご担当者様

新居関所は江戸時代の東海道に置かれた関所です。幕末期に建て替えられた関所建物が国内で唯一現存しています。昭和30年(1955)に国の特別史跡に指定され、今では江戸時代の関所を体感できる文化財として保存・公開しています。現存する関所建物に隣接して関所史料館が開館しており、関所や江戸時代の旅に関する貴重な資料を展示公開しています。

船着場の復元を実現!町のシンボルとして親しまれる関所。

編集部

では、関所の建築上の特徴や周辺景観についてお聞きできますか。

ご担当者様

市街地の中に関所建物が現存していましたが、江戸時代の関所構内を体感できるように構内にあった建物・構造物の復元を進めています。新居関所は浜名湖岸に所在したことが最大の特徴ですが、関所の東側は明治時代以降の埋立てで浜名湖・関所の景観が失われてしまったため、湖岸に位置したことが分かるように渡船場(船着場)・護岸を復元しました。また、関所西側の出入口となる大御門(おおごもん)、女性の取り調べを行った改女(あらためおんな)の住居であった女改之長屋(おんなあらためながや)も復元建築し、女改之長屋は内部を公開しています。

編集部

この関所は地域の方にとってどういった存在であると思われますか。

ご担当者様

大御門は江戸時代にあった位置に復元したため、新居関所南沿いの国道301号の北側歩道内に設置され、地元の人たちが大御門を日々通り抜けており、シンボル的な存在となっています。

毎月開催のミニライブや、子ども向けの体験イベントも実施。

編集部

関所で行われている行事などについてお聞かせください。

ご担当者様

毎月第3日曜日の午前中には新居関所駐車場で「きらく市」が開催され、花苗や軽食の販売、ミニライブなどが行われて賑わっています。ゴールデンウイークには新居関所を案内する団体「新居宿史跡案内人の会」のみなさんが江戸時代の衣装でご案内や記念撮影を行っています。また、毎年11月3日は開館記念日として施設を無料開放しており、合わせてお茶会(無料)も開催しています。8月は無休となっており、子どもたちも楽しめる体験メニューをたくさん用意してみなさまをお待ちしています。さらに、新居関所に隣接する新居関所史料館は、来年2026年11月3日で開館50周年を迎えるため、現在記念行事などを検討中です。

今後の展望

現存する関所建物の保存と構内にあった施設の復元を少しずつ進め、徐々に関所の景観を整えていきたいと考えています。この先も多くの方に訪れていただき、関所はどんな役割を持っていたのか、どんな場所であったのか、当時の時代背景などと合わせて1人でも多くの方に伝えていきたいと思います。

インタビューまとめ

これまでに、箱根関所様・気賀関所様へもお話をお聞きし、今回新居関所様へお話をお聞きできたことで、東海道とその付属街道に位置する3か所の関所の全てについてご紹介することができました。このインタビューだけでは関所の全てを語ることはできませんが、3か所へお話をお聞きしたことで、改めて江戸の世にとって関所がどれほど重要な場所であったかを知ることができました。

争いのない平和な世を目指した徳川家康。その思いに応え、江戸の治安を維持するために設けられた数々の関所。その一つひとつが、厳格な存在であり関所を無理に突破しようとする「関所破り」は当時重罪でした。江戸の世と切って離せない関所は、人々が自由にどこへでも行ける現代では考えられないような存在かもしれません。ですが、その関所があったからこそ当時の人々は穏やかで平和な世を生きることができ、明治の開国・文明開化に至るまで穏やかな時を過ごすことができたのではないでしょうか。静岡へ足を運ばれた際には、ぜひ新居関所だけでなく気賀関所、そして少し足を伸ばして神奈川県の箱根関所へも足を運び、関所巡りをしてみるのも面白いのではないかと思います。

特別史跡新居関跡・新居関所史料館 アクセス情報

特別史跡新居関跡

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この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

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