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眞福寺 “お寺民泊”で新たな活路を。サムハラ神社奥地の寺院。

寺院外観

岡山県津山市。県北に位置するこの市は、県内で3番目の規模を誇る町であり、日本100名城、さくら名所100選にも数えられる津山城(鶴山公園)を有する町です。また、江戸時代の面影を見ることができる重要伝統的建造物群保存地区があり、「津山ホルモンうどん」などのご当地グルメも楽しめる地です。

そんな津山市に位置する眞福寺は、長閑な周辺環境に囲まれた穏やかな時間が流れる寺院です。寺院としてだけでなく宿泊施設としても利用できる宿坊を併設し、観光でこの地を訪れた人々にとって心身共に安らげる場所となっています。今回はそんな寺院の特徴と活動についてご住職様にお話を伺いました。

目次

眞福寺とは

星空

春の桜、初夏の緑、秋の紅葉、冬の雪景色…そして四季を通して夜空に浮かぶ、満点の星。その全てを見ることができるこの津山市で、眞福寺は静かに時を刻んでいます。創建の起源は今から遡ること1300年近く前の時代。現在の場所に遷座してから約350年、美しい四季の移ろいと人々の暮らしを見守り続けてきました。

大阪に本宮を持つサムハラ神社の奥宮の近くにあり、関西方面からお参りに来られる方も多い寺院です。新しく始めた民泊事業は多くの外国人観光客に利用されています。

寺院でより多くの非日常的な体験をしてもらいたい。そんな思いで民泊や地元YouTuberとのコラボなど、さまざまな新しい試みを取り入れ、地域外の人々にも寺院を訪れていただけるよう尽力している先の時代を見据えた寺院です。

【眞福寺 特別インタビュー】

ご住職

多くの人にとって、寺院は非日常的な空間です。日頃から頻繁に足を運ぶ場所ではないけれど、ふと通りすがったとき、いつもとは違うことをしてみたいとき、ゆっくりと過ごしたいとき、そんなときに足を運ぶ場所ではないでしょうか。

まだ全国的に知られる場所ではないかもしれませんが、眞福寺が鎮座するこの町にも四季を感じられる美しい景色が広がっています。その景色に囲まれた寺院で過ごすひと時は訪れた人々に少しの休息と穏やかな時間をもたらしてくれるでしょう。

サムハラ神社の奥に佇む、行基菩薩創建の寺院。

護摩堂の写真
編集部

本日は岡山県津山市の眞福寺様へのインタビューです。この津山市という町はどういった地域でしょうか。

ご住職様

岡山県内では3番目に大きな都市になります。岡山市、倉敷市、津山市というイメージで県北では最も大きい町になると思います。当寺は元々津山市ではなく、合併時に津山市となりました。

編集部

県北に位置されているんですね。地図を拝見する限り、長閑な場所であるとお見受けしますが、周辺環境はいかがでしょうか。

ご住職様

とても長閑な場所です。人口が減少している影響もありますが、町中というよりは落ち着いてお参りができる場所だと思います。

編集部

では、まずはこちらの寺院の歴史や創建の由緒からお聞きできますか。

ご住職様

伝わっているところによると、行基菩薩が創建したとされており、天平12年(740年)が起源だと言われています。あくまで伝わっているところによると、ということですのでハッキリと記録があるわけではないですが、聖武天皇の勅願によって行基によって開かれたとされています。恐らく、最初はお堂のようなものがあったのだとお思いますが、創建当時は槍原(うついばら)と呼ばれる地に開かれたそうです。その後現在から350年ほど前に、現在の場所に遷座し私で21代目の住職となります。遷座してから住職を置いて寺院として成立しました。

編集部

よく分かりました。現在の場所は、サムハラ神社の奥地に鎮座されているということですが、サムハラ神社というのはどういった神社でしょうか。

ご住職様

サムハラ神社は、かつてはごく少数の人しかお祀りしていない神社でしたが、サムハラというお札を戦争に持って行くと弾に当たらずに帰ってきたという謂れがあり、必勝祈願の神社として多くの人が参拝するようになりました。こちらにあるのはサムハラ神社の奥宮で、大阪に本宮があります。そのご縁で関西からもかなりの方がこちらへ来られますので、「サムハラ」というキーワードをお寺のホームページにも使用して、当寺へ誘導できればという思いです(笑)。実は大阪のサムハラ神社を建てたのは当寺の檀家さんだった方で、その方が大阪で事業をされる際に鎮守として遷座したと言われており、そういった意味ではサムハラ神社とも関係があると言えます。

編集部

そういったご縁があるんですね!ご縁があると言えば、ホームページで、田中富三郎さんという方とご縁が深いと拝見しました。この方はどういった方でしょうか。

ご住職様

この方は元々この地域出身の方で、大阪で万年筆の事業を起こされて大成功された実業家の方です。また田中さんはサムハラ神社の奉賛会であった「信光会」の初代会主であり、当寺は彼の菩提寺でもありました。境内には現在でも田中家の家族や親族の位牌がお祀りされており、当寺との繋がりを感じられるものとなっています。当寺に対しても建物の改修などに際して寄付をいただくなど非常にご縁のある方です。

民泊事業を新たに始動。美しい自然の中で非日常的な体験を。

ご住職と薬師庵の写真
編集部

では、寺院に来られた方にぜひ見てほしい見どころや魅力はどんな部分でしょうか。

ご住職様

お祀りしている御本尊は薬師如来様で、他に弁財天もお祀りしていますのでそういった部分をご案内させていただいています。他には周辺環境が魅力です。山の中にある寺院ですので、やはり自然がとても豊かです。春は桜、秋は紅葉が美しく、そういった四季の変化を如実に感じられる部分はとても魅力だと思います。冬場は雪も降る地域で、多いときでだいたい50~60㎝積もります。

編集部

50~60㎝はすごいですね!やはり県北の山の中というと思っているよりも降るんですね。

ご住職様

毎朝雪かきとの戦いです(笑)。美しい光景ではありますが、雪の時期はそういった大変さもあります。

編集部

来られる方はお車で来られる方が多いのでしょうか。

ご住職様

ほとんどの方がお車で来られます。冬場は先ほど言ったような状況ですので、少し苦労されるかもしれませんが、それでも多くの方にお越しいただいています。

編集部

自然が美しいというお話でしたが、ホームページでしだれ桜のお写真を拝見しました。とても綺麗な光景ですね。

ご住職様

そのしだれ桜はライトアップされるとより綺麗で、とても幻想的な光景になります。この写真は地元で有名なインスタグラマーの方に撮っていただいたものです。

しだれ桜③の写真
編集部

日中の顔とは違う雰囲気でとても素敵です。

ご住職様

そういった自然の中にある環境ですので、人工的な音がほとんど聞こえないというのが魅力です。こちらへ上がって来られれば、町中とは違う風景を見ることができ、心を落ち着かせられると思います。

編集部

寺院という場所はやはり少し非日常的な空間と感じる方が多いと思いますが、周辺環境が静かであればよりそう感じられると思います。日常で少し疲れてしまったときにはそういった人工的な音をシャットアウトして別の世界に没入することも大切だと思います。他に、特徴的な部分はありますか。

ご住職様

実は2025年4月から寺院で民泊を始めました。「宿坊 薬師庵」という名称で、これが一番の特徴かと思います。Airbnb(エアービーアンドビー)という、空き部屋やスペースを提供するホストと、宿泊施設を探している旅行客の方をつなぐマッチングサービスに登録しており、誰もが泊まれる施設となっています。まだ始めたばかりですので全国的な知名度は低いですが、10月の旅行シーズンには外国人観光客の方も多くいらっしゃいました。外国人の方は長期で滞在していただけるので、私たちとしてもとてもありがたく思います。

ご住職様

この民泊事業をなぜ始めたかというと、やはり当寺は地方のお寺ですので檀家さんもどんどん減っている状況です。そうした中で寺院での活動以外にも新しい収入源を得る必要があると感じ、こういった事業を始めました。施設内では囲炉裏で焼肉を食べることもできますし、そういった非日常を体験していただける施設となっています。

編集部

お寺で民泊をすると、こういった体験ができるんですね!これはとても新しい試みだと思います!

ご住職様

来られる方は関西圏の方が多いのですが、こういったことをきっかけとしてお寺とつながりを持って頂くと嬉しいという思いもあります。やはり地方の寺院ですので、お寺の事業だけでは維持が難しいという事実もあり、何かのきっかけでこうした事業が一人でも多くの方の目に留まれば新しい活路を開くことにつながるのではないかと思い、民泊を始めました。

編集部

お寺で泊まれる所はまだまだ少ないイメージですので、津山市に観光に来られた際はぜひ検討の一つに入れてほしいですね!ホテルや旅館とは違い、これだけの自然を楽しみながらいつもとは違う空間で食べるご飯は、また格別だと思います!

ご住職様

本堂には薬師如来様が鎮座していますので、そちらで心を、宿坊で体を癒していただくという、心身どちらも労うことができる場所、というコンセプトです。寝る場所も畳だけでなくベッドもご用意していますので、外国人の方にも利用していただきやすいと思います。

薬師庵ベッドの写真
編集部

家族連れでも泊まりやすくとても良い施設だと思います。

ご住職様

観光寺にするのはなかなか難しいですが、こういったことを活用してさまざまな方に来ていただければ嬉しいです。

編集部

宿泊施設内のお写真を見ると、キッチンやトイレも本当に綺麗に整えられていますね。

ご住職様

やはりキッチン、トイレ、お風呂はきちんと綺麗にしていないと泊まりたいと思いませんよね。まずそこが綺麗でないと良い印象を与えないと思いますので、きちんと整備しています。

編集部

一度泊まると帰りたくなくなりそうです(笑)。先ほどおっしゃっていたようにバーベキューができる場所もあるということで、一週間くらい泊まっていたい空間ですね。

ご住職様

お寺でバーベキューというと少し抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、私が大切にしている言葉に「本当の精進というのは、残さず食べることが精進だ」というものがあり、そういったことを来られた方にもお話しています。肉だけでなく野菜も生き物ですから、そういった命をいただき残さず食べること、それが本当の精進ということだから、残さずに食べてくれればそれでいいと思っています。

バーベキューの写真
編集部

そうですね。何よりも出されたものや作ったものをきちんと残さずに食べること、それが一番大切ですね。

ご住職様

どこのお寺もそうだと思いますが、やはり見せ方次第でそれまで魅力的に見せられなかった部分を魅力的に見せることは可能だと思います。私がこういったことを寺院でやろうと考えたのも他の方から教えていただいたことがきっかけです。有名なインスタグラマーの方からメッセージをいただくこともありますし、以前にはお寺などの番組にも出演されている「みほとけちゃん」という芸人の方に宿坊の宿泊体験をして頂いたことや、岡山を切り撮る人として活躍されているインスタグラマーの方が共同投稿をしていただいた記事はとてもSNS上でバズり、フォロワーが一気に300人ほど増えたこともありました。現在も当寺のインスタグラムにみほとけちゃんのリンクを掲載しており、交流が続いています。そんなふうに行動することが良い結果に繋がることもありますので、この先もそういった輪を広げられればと思います。

みほとけちゃんの写真
編集部

とても良い循環になっていますね。みほとけちゃんという方はお寺や仏像を研究されている芸人さんなんですね。さまざまなジャンルの方がいらっしゃることが知れて、私にとっても勉強になります!

ご住職様

たしか元々アイドルをされていた方なんですが、自分の生きる道を探したいということでそちらの道で頑張られているようです。きっとどこかには自分の生きる道のヒントがあると思いますので、皆さんにも自分の道を探してもらえれば嬉しいです。この先は、イベントやコンサートなどでお寺の境内を使いたいという方がいれば、提供したいと思っています。

地元YouTuberともコラボ!墓じまい事業・永代供養も実施。

編集部

境内の建物についてもお聞きしていきます。本堂はとても立派なものとお見受けしますが、こちらはいつ頃に建てられた建物なのでしょうか。

ご住職様

これは30年ほど前、平成の間に建て替えた建物なので新しいものです。大師堂と護摩堂は旧本堂となりそちらは100年以上前から現存している建物です。

本堂の写真
編集部

歴史のある建物なんですね。では、寺院で行われている行事などで地域の方と共にされているものや、地域の方にご参加いただけるものはありますか。

ご住職様

お盆に行う施餓鬼供養(せがきくよう)という行事では、先祖の霊と無縁仏の供養を行っています。日頃なかなか思うことがないご先祖様への感謝の思いを捧げ、手を合わせる時間です。

ご住職様

8月中旬には地蔵盆と納涼祭が行われます。納涼祭では境内に提灯を飾り、地域の方に盆踊りでご参加いただいています。地蔵盆の際には、その年に地域で話題になった方や地元のYouTuberを呼んで皆さんに楽しい時間となっています。

ご住職様

また、境内では四季を通して美しい植栽を見ることができるのも特徴です。春は水芭蕉、桜、石楠花(しゃくなげ)、夏は沙羅双樹(さらそうじゅ)、百日紅(さるすべり)、秋は見事な紅葉を見ることができます。冬は雪に囲まれた冬らしい光景を見ることができ、本当にこの町に暮らしていて良かったと感じます。

編集部

地蔵盆の際には子どもたちもたくさん集まっている様子を拝見しました。

ご住職様

屋台などもたくさん出ていますので、地域の子どもたちも楽しみに来てくれています。ただ地域の子どもたちもどんどん数が減っているので寂しさもありますが、こうして行事の度に集まってくれる子どもたちを大切にしようと思います。

編集部

Instagramも拝見していますが、外国人の方が結婚式を挙げられたお写真があります。こうしたことはよくあることなのでしょうか。

ご住職様

いえ、これはとても珍しいことでした。外国人のカップルの方が観光でこちらへ来られて簡単でいいので結婚式を挙げてくれないかと言われ、執り行わせていただきました。日本人がハワイなどの小さなチャペルで結婚式を挙げるような感覚かもしれません。

外国人カップルの写真
ご住職様

他に珍しい話ですと、私が昔柔道をしていた関係で高校の柔道部の方がインターハイ前にこちらへ修行に来られました。その結果、良い成績を残せたということでまた来年もというお話をいただきました。坐禅などさまざまな体験をしていただきましたが、当寺のご利益が少しでもあれば嬉しい限りです。

編集部

上空からのお写真を拝見すると、境内がとても広い印象ですが、これだけの広さの境内を美しく維持されるのは大変ではないですか。

ご住職様

大変です(笑)。ですが、やはり来られた方に気持ちよくお参りしていただきたいので、美観維持も頑張っています。また、広い敷地を活かして墓じまい事業も始めました。

編集部

それは良いですね。お墓を継ぐ者がおらずお墓をどうすれば、と思われているご家族も多いと思いますので、寺院で墓じまいをお手伝いいただけるのはとても助かると思います。

ご住職様

民泊事業などを通じて墓じまいや永代供養のことも知っていただければ幸いです。

今後の展望

今後は、新しく始めた民泊事業をもっと皆さんに知っていただき、地域の活性化に繋げたいと考えています。そういった新しいことを積極的に展開していき、寺院を美しく保っていく原動力にしたいと考えています。

特に若い世代の方は寺院へ足を運ぶという習慣がほぼないと思われますので、そういった目新しい事業で寺院にも目を向けていただければ嬉しいです。どこかへ行こうと考えた時に、寺院がその候補の1つになる、そんな人が一人でも増えれば寺院にも活気が出て地域も活性化すると信じています。

インタビューまとめ

岡山と言えば、岡山市内や倉敷など観光地として有名な場所がまず浮かびますが、ここ津山市も知る人ぞ知る魅力が多くあると感じました。豊かな自然だけでなく、城下町の面影を残す町並みなど、多くの人を魅了する見どころに溢れています。

そしてこの眞福寺も同様に、地域外の人々が知るべき特徴がたくさんあります。特に新たに始めた民泊事業は観光客の方にとって、とてもありがたい事業です。今回のインタビューを通して、ご住職様からは「寺院だからできない」ではなく「寺院でもこんなことができる」ということを教えていただきました。

この先も、この寺院ならではの事業展開、そしてそれによって地域全体が活性化することを願っています。

眞福寺 アクセス情報

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この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

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