現代では「住みやすい街、暮らしたい街」としても名を知られる埼玉県川越市。国の重要文化財である「時の鐘」や小江戸とも呼ばれるレトロな街並みが有名です。穏やかで暮らしやすい町・川越に鎮座して400年以上の川越熊野神社。元々はお寺の中で管轄されていた神社でしたが、神仏分離の際に分かれ川越熊野神社として親しまれてきました。ですが、神仏分離の際にも境内に置かれたカラス天狗様や弁天様は取り締まれられることがなく、現在でもカラス天狗様や弁天様をお祀りしている珍し神社です。
境内には四柱の神様をお祀りし、アジア圏をはじめとする海外からの観光客も多く、日本にしかない神社への参拝という文化を広める一端を担っています。今回は神社の宮司様に神社の歴史、そして境内に点在する数多くの見どころについてお話をお伺いしました。
川越熊野神社とは
創建は今から435年の1590年と伝えられる川越熊野神社。都心へのアクセスも便利な川越の地に根差して400年以上、地域の人々の暮らしを見守ってきました。
境内には貴重なカラス天狗様をお祀りした秋葉神社や体を撫でることでご利益を受けられるという「なで蛇様」もお祀りされています。それぞれ、ただお祀りするだけでなく宮司様ご自身が「何か一工夫を」と考えられ、さまざまな方のご協力により他の神社では見られないお祀りの形式を見ることができます。安芸の宮島で有名な厳島神社をはじめ、境内には摂社も多く御祭神だけでなく、より多くの御利益を受けることができます。
毎年各地域で盛り上がる酉の市は、地元の方のご協力もありとても賑わっています。数年前に始めた四季詣では、各季節で特別御朱印を頒布し御朱印ブームもあり多くの方が求めに来られます。
古くから続く伝統行事だけでなく神社として新しい試みにも取り組まれており、今後の境内整備も計画されている活気ある神社です。
【川越熊野神社 特別インタビュー】
日本神話に登場する三本足を持つカラスとして有名な八咫烏。神武天皇が熊野から大和の橿原へ向かう際に道を先導したと言われ、熊野信仰だけでなく現在ではサッカー日本代表のエンブレムとしても用いられています。
そんな八咫烏をはじめ、白蛇や秋葉杉の御利益も受けることができる川越熊野神社。境内は足踏み健康ロードや運試しの輪投げなど、誰もが来て楽しめるポイントが多数あり、参拝を楽しめる神社です。
お披露目に一工夫を。神社では珍しいお祀りも。
編集部埼玉県川越市に鎮座されている川越熊野神社様へのインタビューです。まずはこちらの神社の歴史、由来についてお聞きできますか。



当社の由緒は、天正十八年(1590年)蓮馨寺二世然誉文応僧正(れんけいじにせいねんよぶんのうそうじょう)が紀州熊野より勧請したことに始まり、それ以降松郷の人々が氏神として崇敬してきました。その後時代が下り、正徳三年(1713年)同寺十六世然誉了鑑僧正(じゅうろくせい ねんよりょうかんそうじょう)の時代、社殿を改築し鳥居を石造りとしました。現在ある二の鳥居がそれにあたります。開運や縁結び、厄除けの神様として親しまれており、多くの方がご参拝に訪れています。ご祭神は熊野大神であり、伊弉諾命(いざなぎのみこと)・伊弉册命(いざなみのみこと)・事解之男命(ことさかのおのみこと)・速玉之男命(はやたまのおのみこと)の四柱の神様をお祀りしています。元々は蓮馨寺というお寺の中にあった神社でした。本殿は神明造・銅板葺・檜材、拝殿は入母屋造・瓦葺・檜材です。境内社も銅板葺 檜材のものが多く、緑に包まれ境内整備も整っており、街中で参拝者が多い神社ですが、清々しくお参りすることができます。



では、この神社の特徴をお聞きできますか。境内にはとても見どころが多いとお聞きしました。



当社は社紋を八咫烏(やたがらす)としています。烏は夜明けを呼び太陽を招く鳥と言われており、明るい世界へと導いてくれる鳥として信仰されています。またかつて日本を統一した神武天皇が熊野の山中で道に迷われた際、八咫烏が先導したという言い伝えがあり、導きの神としても信仰されています。そして、その八咫烏をお祀りした「むすひの庭」というものが境内にあり、そこでは神の使いである八咫烏のお言葉を聞くことができる「音声おみくじ」が置かれています。これは、当社と川越市にある尚美学園大学が共同で開発したものです。八咫烏をただお祀りするよりも一工夫加えたいと思い、観光協会の方から尚美学園大学の情報芸術学科の先生をご紹介いただきました。そして、その先生がオペラの先生にもご協力いただき、「開運」「縁結び」「神恩感謝」の3つの水晶球を撫でると、八咫烏のお言葉が聞けるというのはどうだろうか、とお話をいただきそういったおみくじを開発しました。境内にはこの「むすひの庭」をはじめ「カラス天狗様」「秋葉杉の御柱」「足踏み健康ロード」「銭洗弁財天」「なで蛇様」「運試し輪投げ」など、数多くの体験型の見所があります。







実に見どころの多い神社なんですね。秋葉杉の御柱というのはどういったものでしょうか。



これは浜松市天竜区にある秋葉山本宮秋葉神社より頂いた「秋葉杉御柱」です。当社の境内には末社として秋葉神社がありますが、この中にカラス天狗様がお祀りされています。カラス天狗は一般的には仏教と関係が深い存在として知られており、明治時代の神仏分離の際に神社に仏教系のものをお祀りするのはいけないということで、秋葉山本宮の秋葉神社でもカラス天狗は現在、隣の寺院にお祀りされています。ですが、当社は大規模なお宮というわけではなくそういった取り締まりでも見逃していただけたのか、現在もカラス天狗様の御神像をお祀りしている貴重な神社です。その貴重な御神像を皆様にお披露目するにあたり、防犯の観点から防犯設備を整え御開帳とし、更にただ御開帳するだけではなく一工夫を、と思い長野県の善光寺で7に一度行われている「前立本尊(※1)」という御開帳の形式を参考にしました。秋葉神社より頂いた杉の木を植え、そこに本柱を立て、カラス天狗様の手と紐で繋がれた本柱を触ることでカラス天狗様のご利益だけでなく、秋葉山本宮秋葉神社の御利益も受けていただくことができます。
※1…善光寺で7年に一度の周期で行われる「善光寺前立本尊御開帳」という行事。絶対秘仏であり普段はお姿を見ることができない御本尊「一光三尊(いっこうさんぞん)阿弥陀如来」と同じお姿をした「前立本尊」を本堂にお迎えして行う。御開帳期間には、前立本尊の指先から伸びる白い「善の綱」が本堂前に建てられた回向柱(えこうばしら)に結ばれ、その柱に触れるとご本尊とつながり功徳を得ることができるとされている。



浜松から頂いた杉の木なんですね!カラス天狗と本宮のご利益、ダブルで受けられるのはとても良いですね!では、「なで蛇様」とはどういうものでしょうか。





これは当社の境内の厳島神社にお祀りされているものです。厳島神社は女の神様である市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)をお祀りしていますが、この神様は仏教の弁天様と同一視されている神様です。ですが、先ほども話したように明治の神仏分離の時代に神道と仏教は分ける必要があったため、現在弁天様は厳島神社の隣にある大願寺というお寺にお祀りされています。当社では先ほども話したように、あまり取り締まりがなかったため弁天様をお祀りすることとなり、同時に当社がまだ蓮馨寺の中にあった頃に存在していた「宝池(たからいけ)」という池を新しく作りご利益を頂こうということになりました。そして、弁天様の神使(しんし=神道において神の使いと認識される動物)とされる白蛇様をお祀りすることになり、ちょうど同じ頃に有田焼の窯元の方が当社を訪ねてこられ、白蛇様を奉納させてほしいとおっしゃったんです。当社でもちょうど白蛇様をお祀りしようと思っていたところですとお話をして、ありがたくその白蛇様をご神体としてお祀りさせていただいています。そういった流れでこの「白蛇神社」が始まり、その中に「なで蛇様」がお祀りされています。このなで蛇様は、体の部分を撫でるとご利益があると言われており、撫でて行かれる方が多いです。
埼玉各地で賑わう酉の市。神社独自の“四季詣”も好評。







では、地域の方との交流についてお聞きします。地域の方を交えて行われる行事などはありますか。



毎年12月3日は川越酉の市が開催され、地元の善男善女で賑わいます。これは熊手を持って家内安全・商売繁盛を祈願するもので、都内では酉の日に行われますが、埼玉は日付でどの地域で行われるかが決まっています。12月3日は川越、5日は小川町、8日は熊谷、10日は大宮、12日は浦和、15日が川口市というように順番に回っていきます。そして毎月第3日曜日は境内社「川越銭洗弁財天」のご縁日となっており、お囃子や神楽の奉納、宝池でお清めされたお福銭頒布祭が開かれます。15分ほどの頒布祭にご参加いただいた方全員に、無料でお守りなどをお分けしています。







酉の市は各地域でとても盛り上がりそうですね!ホームページでは「四季詣」というものを開催されていると拝見しました。これはどういったものでしょうか。



毎年「春詣」「夏詣」「秋詣」「冬詣」「初詣」の5つの四季詣を開催しています。四季詣は始めてからまだ6~7年ですが、多くの方にお越しいただいています。









それぞれの季節で特別御朱印を出し、夏越の大祓いでは茅の輪くぐりや人形による清め祓いなどさまざまな行事が開催されます。
<春、夏、秋、冬詣の特別御朱印の写真>











四季詣全てが揃うと金色の八咫烏の御守りやおみくじなどを記念品としてお分けしていますので、皆さん一生懸命集めてくださっています。また、飛び地境外社の「本阿弥稲荷神社」では毎年7月の第1日曜日に「御太刀洗い」という行事が開催されます。御太刀は木製で彫刻があり、長さ3間余り(約5.4m)あるものです。これを子供たちが「わっしょい わっしょい」の掛け声とともに、崇敬者の家一軒一軒に御太刀を突っ込むと、その家の家内安全と悪病にかからないという信仰があります。恐らく江戸時代頃には既にあった行事と考えられており、長く続いている伝統行事です。




今後の展望
今後とも参拝者の皆様に参拝して良かったと思っていただけるような神社を目指していきます。最終的には「神恩感謝」「敬神崇祖」といった神社神道の本質に迫っていただけるようにしたいと思っています。
また今年中にバス通り側に鳥居を建立し、バス通り側からでも神社があると分かっていただけるよう境内整備を進めていきたいと思っています。
インタビューまとめ
お話をお聞きした宮司様はとても明朗な方で、この神社の魅力について分かりやすくお聞かせいただきました。境内でお祀りされている八咫烏は参拝される方からも好評で開運・縁結びのご利益があるとして親しまれています。
境内に数多くある見どころは訪れる人々を楽しませ、「神社への参拝は楽しいな」と思わせてくれるものばかりです。夏が終わり、涼しくなった時には、境内を散歩するような気持でふらっと立ち寄り参拝すれば、楽しい思い出を作れるのではないでしょうか。
川越熊野神社 アクセス情報
住所:〒350-0066 埼玉県川越市連雀町17-1
TEL:049-225-4975
Mail:kawagoekumano@bunkaisanlab
URL:https://www.kawagoekumano.jp/








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