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須佐神社 須佐の地に鎮座して1300年、参拝者を思う発信力も。

出雲市と言えば、縁結びの神様として知られる出雲大社が全国的にも有名で、数ある神社の中でも多くの参拝者が訪れる神社です。そして、その同じ出雲・須佐の地に、1300年ほどの歴史を刻むと言われる神社があります。神社の名は須佐神社。出雲の中心部より少し離れた山間部に位置するこの神社は、地域の人々が神社の行事に積極的に協力し、ほぼ全ての神事に携わっている、非常に地域に愛され守られている神社です。

穏やかなロケーションであるだけに、都心部のように軽快なアクセスが難しく、それ故に最近ではSNSによる神社やこの地域に関する情報発信も開始しました。訪れる人々が気持ちよく訪れられる場所でありたい、そんな思いを強く持つこの神社の魅力について権禰宜(ごんねぎ)を務められるご担当者様にお伺いしました。

目次

須佐神社とは

社殿の写真

創建は1300年ほど前と考えられ、『風土記』にはこの神社が登場することが確認でき、その成立時期と同じ頃の総研ではないかと考えられています。御祭神は須佐能袁命(すさのをのみこと)をはじめとする四柱の神様で、境内には数々の末社も存在し、受けられるご利益は数多くあります。

社殿横には、神社創建時より存在していると言われる杉の木はこの神社が「日本一のパワースポット」と呼ばれる所以の一つでもあります。また神社には「七不思議」と呼ばれる逸話も伝わっており、御祭神である須佐能袁命に関連するお話や、比較的後世になってから言われるようになったエピソードもあります。

多くの観光客が訪れる出雲地方であるからこそ、一人ひとりの参拝者を大切にしたい、気持ちよく訪れられる場所でありたいと願い、地域の方との交流も絶やさないとても温かい神社です。

【須佐神社 特別インタビュー】

須佐神社における行事はそのほとんどに地域の方の尽力があり、昔も今も須佐の地域にとって無くてはならない神社です。この町の人々が神社を思い、そして神社もその気持ちに応えるように日々境内の整備を行い、人々がご利益を受けていただけるよう、快適な環境を整えています。

社殿は伝統的な大社造を採用し、島根県の指定文化財にも指定されています。昔ながらの趣を守りながらも社殿の建て替えや地域の子どもたちとの新たな交流行事を行うなど、未来に向かって躍進を続けています。

『風土記』にも登場する悠久の歴史。出雲・須佐を愛する活気ある神社。

境内
編集部

本日インタビューさせていただくのは、出雲大社があることで有名な島根県出雲市に鎮座されている須佐神社様です。神社がある地域はどういった場所でしょうか。

ご担当者様

出雲地方はかつて石見・出雲・隠岐という国に分かれていました。この神社がある須佐という町は出雲の中心部からは少し離れた山側にあり、広島県との県境付近にある町です。天気予報を見る際にも出雲市内の天気を見るよりも広島県境辺りの予報を見た方が近いような場所で、出雲大社がある平野部とはまた少し違う雰囲気です。山間部ですので、あまり人が多い場所でもなく落ち着いた町です。

編集部

では、こちらの神社の歴史や由来からお聞きできますか。創建の時期は分かっているのでしょうか。

ご担当者様

明確に何年何月に創建、ということは資料に残っていないため分からず、創建時期を聞かれた際には神代(しんだい・かみよ)という人間の時代ではなく神様がいた時代の創建だと考えられるとご説明していいます。また、この神社が登場する話は『古事記』や『日本書紀』ではなく『風土記』になるため、風土記が成立した年代あたりが神社の創建時期にあたるのではないかとも考えられ、そう考えると1300年ほどの歴史があると考えられます。

編集部

歴史と由緒ある神社ですね。鎮座地は創建当時から変わっていないのでしょうか。

ご担当者様

この神社が建っている裏に宮ノ尾山(みやのおやま)という山があり、かつてはそこに元のお宮があったのではないかと言われています。元々はそちらにお祀りをする場所があり、1300年前頃にこちらに下りて来たのではないかと言われています。1300年前には現在の場所に鎮座しており、それよりも以前に宮ノ尾山に社殿があったのではないかと考えられています。

編集部

須佐という名前も御祭神である須佐能袁命(すさのをのみこと)から取られているんですね。御祭神は四柱の神様ということですが、それぞれどういった神様でしょうか。

ご担当者様

稲田比売命(いなたひめのみこと)は須佐能袁命の奥さんであり、足摩槌命 (あしなづちのみこと)、手摩槌命 (てなづちのみこと)は稲田比売命のご両親です。足摩槌命が須佐能袁命から「この地を治めるように」という命を受け、そこからずっと守られてきた神社です。そして、現在の宮司が足摩槌命の子孫から数えて現在79代目です。

樹齢1300年とも言われる杉の木も。パワースポットとしての御利益も。

編集部

では、こちらの神社の魅力や特徴をお聞かせください。

ご担当者様

やはり神社は神様をお祀りしている場所ですから、まず本殿は必ず見てほしいです。本殿は島根県の指定文化財にもなっておりとても価値のある建物です。境内には神社創建と同じ頃くらいから生えていると言われる大きな杉の木があり、その杉の木をパワースポットとして回られる方も多いです。

編集部

この杉の木は日本一のパワースポットとも言われているそうですね。神社創建と同時期と言うと樹齢1300年ほどと考えていいのでしょうか。

ご担当者様

それくらいになると思います。神社については、基本的に私たちから「ここを見てください」「パワースポットです」と言うことはないのですが、神社に伝わる七不思議などにまつわる場所もありますので、そういった点もご覧いただければと思います。特に杉の木は社殿の横に聳え立っているのですが、こういった場所に大きな木があると切ってしまうことが多いのですが、当社ではそのまま残しているため、とても迫力がありその荘厳さが来られた方に神秘的な力を感じさせるのかもしれません。参拝された方が感じ取ったものをこちらが否定することはできませんので、パワーを頂ける場所だと感じてもらえたのであれば嬉しいです。そのようにして、話が広まって全国から訪れていただけるのも、神様の力の一つだと思っています。

編集部

七不思議のお話、ホームページでも拝見しました。さまざまなご利益のお話など、とても興味深いものでした。

ご担当者様

境内はとても広いというわけではないので、来られた方はぐるっと回りながら見て行かれる方が多いと思います。

編集部

出雲大社が有名な地域ですが、観光客の方はこちらにも多く訪れるのでしょうか。

ご担当者様

そうですね。時期にもよりますが、地域の外から来られる方も多く参拝いただいています。海外の方はまだあまり多くありませんが、これからインバウンドの影響で多くかもしれないと考えています。

編集部

境内には末社も多い印象です。西末社・東末社にはそれぞれ多くの神様がお祀りされているようですね。

ご担当者様

それぞれの末社にも参拝されていく方が多いです。基本的に末社というものはその神社の主格となる御祭神に関連する神様をお祀りしていることが多いです。当社では西末社・東末社は須佐能袁命のお姉さんである天照大御神をお祀りしているなど、御祭神に関連のある神様が鎮座されています。他には特徴的、というほどではありませんが御守りは20~30種類ほどを頒布し、毎月の行事などが分かる瓦版も発行しています。神社へ来られた方のちょっとした手土産になればと思い、フォトカードも配布しています。そういったささやかですが喜んでいただけるものがたくさんありますので、ぜひ細かな部分も見ていただければと思います。

“神在月”には多くの人出も。地域住民はもちろん、子どもたちの交流も。

編集部

では、神社建築や周辺景観の特徴についてお聞きします。

ご担当者様

本殿は伝統的な大社造で、四方の柱の間に1本ずつ柱がありその上にお社が建っている造りです。社殿の中は入ってすぐの扉から間仕切りがあり、カタカナのコの字に回っていただき反対側に出るという典型的な大社造です。この本殿は冒頭にお話したように昭和41年に島根県の指定文化財に指定されています。このご本殿と、参拝者がお参りする拝殿があり、最近では他の神社様ですとその2つの建物が連続しており外に出られるような造りではない場所が多いですが、この神社はご本殿と拝殿の間にお庭を挟んでいるため、神様をお祀りしている本殿と人間が参拝する拝殿が離れているという少し珍しい昔ながらの大社造です。

編集部

最近では少し珍しい貴重な社殿なんですね。参拝される方は車でのご来社が多いのでしょうか。

ご担当者様

車で来られる方が一番多いですが、今年からバスの路線が神社の手前まで延伸したためバスで来られる方も少し増えたという印象です。他には市の観光協会などが観光ルートに当社を組みこんでくださっているので、乗り合いのタクシーで来られる方も多いです。電車が通っていない地域のため、そういった交通手段に頼るしかないのですが、出雲市内を観光するにあたっても車がないと難しいため、レンタカーを借りて回られるのも良いかと思います。

編集部

では、地域の皆さんとの交流についてもお聞きします。神社のお祭りなど、地域の方と共に実施されている行事は何かありますか。

ご担当者様

当社は神主単体で回せるような神社ではありませんので、お祭りに関しては基本的に氏子さんのご協力があって実施できます。特定のお祭りに、というよりは全体的に私たちが主体となって実施し、地域の方にもご協力いただいているという感じです。その中でも大きなお祭りは8月15日に切明神事 (きりあけしんじ)です。これは竹で作ったお花を境内に立て、その周辺で念佛(ねんぶつ)踊りを踊るというお祭りです。念佛踊りは地元の念佛踊りの保存会の方が披露してくれます。

切明神事の写真
ご担当者様

他には11月23日の新嘗祭では、この地域でスサノオウォークという、町中を歩いて回るイベントがあり、その際には当社の境内で大根鍋が振舞われます。これは、かつて今よりも交通の便が悪かった頃に、神社へ来られた方へ食事の振る舞いがあったそうで、そういった昔の文化を今に残していこうということで、数年前から大根鍋同好会の方々が新嘗祭開催にあたって毎年振舞ってくれています。また、2月3日の節分祭では節分実行委員会の方々が境内で餅まきや豆まきをしてくれます。このように地域の保存会や委員会の方々が一年間を通してご協力いただいているため、お祭りを実施することができます。

編集部

地域の方に支えられている神社なんですね。最も人が集まるのはどの場面でしょうか。

ご担当者様

期間を選ばずに言うのであれば、お正月は仕事始めまでの期間となるためその期間が最も多くの人で賑わいます。ですが、単日では新嘗祭をはじめどのお祭りでも多くの方が訪れてくださいます。たとえば、11月~12月の頭までこちらの地域は神在月(かみありづき)になりますので、全国から多くの方がいらっしゃいます。

編集部

そうでしたね!出雲地方では出雲大社に全国から神様が集まることから、該当の期間は神無月ではなく神在月になりますね!やはりその時期は観光客の方も多いんですね。

ご担当者様

出雲大社はもちろんですが、当社をはじめ他の神社様も回られる方が多いようで、とても賑わいのある期間です。他に、行事とは少し違いますが、今年から神社に治めるもち米を地域の保育園のお子さんたちに植えてもらい収穫後に奉納してもらっています。始まったばかりの取り組みですので、これから続けられるかはわかりませんが、新たな取り組みとして子どもたちにも楽しんでもらえれば嬉しいです。また、地域の小学生たちが社会科見学の一環で神社に来てくれたり、園児の子たちが境内にお散歩に来てくれることもあります。8月15日の切明神事では地元の小学生たちが書いた書画や作品をお借りして書画展も行っています。子どもたちとの関わりではそういったことや生まれた時のお宮参り、成長してからの七五三参拝でも来ていただくことが多く、人生の節目となる大切な場面に立ち会わせていただいています。

神の座を美しくする遷宮事業も進行中。観光客へ向けたSNSでの情報発信も。

編集部

ホームページで神社の御遷宮というものを拝見しましたが、これはどういった行事でしょうか。

ご担当者様

本殿の屋根は木で葺いていますが、経年劣化により傷んできますのでそれを取り替えるにあたり神様の頭の上で工事をするわけにはいきませんので、一度神様に社殿から出ていただきます。そして仮のお住まいへ行っていただき工事が終わったら帰ってきていただく、というものです。正式にはお宮が遷るわけではありませんので、遷宮というより神様の座が遷る「遷座」になります。その一連の流れを遷宮という行事として行っています。

編集部

なるほど。約30年に一度のスパンで行われるということですが、これはどういった経緯でこのスパンになっているのでしょうか。

ご担当者様

明確にそのスパンで、と決まっているわけではないのですが部材の傷み具合などはだいたい同じ年数で傷んできますので、平均するとおおよそ30年に一度になります。神社だけで修繕するのは難しいので、遷宮委員会という神社の神主と地域から選出された役員の方からなる組織で話し合い、ご協力をいただいて修繕にあたっています。

編集部

ここでもやはり地域の方の思いも聞きながら実施されているんですね。この神社が地域にとってとても大切で重要な場所だということがよく分かります。最近ではYouTubeやX、インスタグラムなどのSNS更新もされているんですね。

ご担当者様

SNSなどの更新にあたっては神社関係者全員で行っているわけではありませんが、YouTubeではライブ配信を行う時もあります。こういったことを始めた前提としては、先ほども申し上げたようにこの地域はあまり交通の便が良い場所ではありません。出雲市内とも天気が違うことが多く、市内に観光に来られた方がこちらへ行こうとしても、こちらの天気が分からないということもあります。冬場であれば出雲市内ではとても晴れているのに、こちらは1mの雪が積もっていることもあります。そういった違いがあることを事前に知らずに来られると、やはり困りますよね。そういった事が起きないようにこちらから情報を発信していく必要があると思い、SNSを始めました。出雲から帰られる前に情報を見て、今日は須佐の辺りも晴れているんだな、こんなことをやっているんだ、と知ってもらえればという思いです。少しでも気になった時に、手軽に当社の事を知っていただけるツールとして活用しています。実際に来られた方の中には、インスタグラムを見てます!と言われる方もいてとても嬉しいです!

【神社に伝わる七不思議】

・塩ノ井 (しおのい)

塩井立て看板

神社前の池に、須佐之男命が自ら潮を汲み、この土地を清めたと言われている水があります。この水は日本海に繋がっており、潮の満ち引きによって湧き上がる水量が違うと言われています。水を分析した結果、「芒硝含有食塩泉(がんしょくえんぼうしょうせん)」という水質で弱アルカリ性であることが分かっています。

・相生の松 (あいおいのまつ)

神社本殿の裏に立つ松の木で、一本の木に男松と女松の両方の肌を持った大木です。現在は枯れてしまい、その代わりの松を植えています。

・神馬 (しんめ)

かつて神社には馬を奉納する習慣があり、神社に奉納された馬は神馬と呼ばれていました。その馬は後に必ず白馬に変わり、日常とは異なる事象を予知したと言われています。現在は本物の馬はおらず、像が残されています。

・落ち葉の槇 (おちばのまき)

槇(柏)の葉に松の葉で刺したような穴がある槇の喬木です。須佐之男命の妻である櫛名田比売命(くしなだひめのみこと)がお産をされた際、産具を柏の葉で包み、松の葉で綴じて川へ流したと言われています。そしてそれが川畔に茂り、現在に至っているそうです。この古事は後に、須佐神社の神紋である「蔓柏」となり、蔓は松の葉を文様化したものであり、須佐家の家紋の起源とも言われています。

・影無桜 (かげなしさくら)

かつて隠岐の国で、不作が続いていました。その原因が「須佐大宮の境内にある大きな桜の木が繁茂していることで、隠岐へ影をもたらしていることにある」と考え「出雲へ出向き、須佐の国造にその桜の木を切ってもらうようお願いしよう」ということになり、桜の木は切られてしまいました。その後、五穀豊穣の願いが叶い、隠岐の不作は解消されました。ですが、その切り株は枯れることなく芽を出しては枯れ、枯れてはまた芽が出るということを繰り返し、現在に至っています。

・星滑 (ほしなめら)

神社の西、須佐の中山の頂上付近に白い斑点が付いた岩盤があり、その斑点が白く輝くのですが、その光が大きい年には豊作となり、光が小さい年は凶作になると言われています。

・雨壺 (あまつぼ)

神社に西に素鵝川という川が流れており、その川を下った田んぼの中に大きいな岩があります。その中に径二尺(70㎝)ほどの芝生があり、そこを荒らすと須佐大神の怒りにふれて洪水が起きると言われています。実際に、その場所を荒らしたことで翌日に暴風雨となり洪水が起こり村民の怒りをかい村から追放された人物がいた、という事実も残されています。

今後の展望

2025年11月に御遷宮事業のご本殿工事が終了し、令和7年の正遷座祭を無事に終えることができました、今後も令和9年まで拝殿の建て替え工事などが続く予定のため、何事もなく完遂することを目標としています。今後は外国人観光客の方も増えると思われ、そういった方々へ向けた対応も準備していく必要があります。これまでとは違うことも多くあると思いますが、一つひとつのことに注力し、上手に向き合っていきたいと考えています。

インタビューまとめ

出雲地方の神社と聞くとやはり出雲大社が浮かんでしまいますが、この須佐神社にもまた、多くの方が訪れる魅力がありました。インタビューのお電話を頂いた際にもとてもご丁寧にお話いただき、当日のインタビューにおいても一つひとつ、分かりやすくご説明いただきました。そういった、「神社のことを伝えたい」という思いが参拝者にも伝わり、出雲へ来られた方が興味を持ち訪れる神社となっているのだと思います。

令和9年まで続く建て替え工事など、神社をより良い状態で維持していくための事業も行われており、この先も、出雲という日本有数の神様が集う場所で人々の生活を見守り、長い長い時を刻んでいくでしょう。

須佐神社

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この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

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