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妙輪寺 米国にルーツを持つ住職が開く、グローバルな寺院。

妙輪寺の外観

寺院と聞くと、それは間違いなくこの国が長く受け継いできた伝統的なものであり、日本の中で守られてきたものだと、多くの方が思うでしょう。ですが、ここ妙輪寺には、その社会的通念とは少し違う雰囲気が漂っています。

現在のご住職は、先代ご住職が海外への布教に熱心だったことからアメリカで暮らした経験を持ち、アメリカの医学部で西洋医学を学ばれ、僧侶としてだけでなく現役の医療従事者としても活躍されています。

「健康づくり・学び・ご供養」の3つの軸を大切にしながら、地域に、そして海外にも開かれた寺院として多くの方が集う寺院です。

目次

妙輪寺とは

法要の画像

湘南の海から徒歩1分。間近に望むこの妙輪寺では、海の音をBGMに穏やかな心で貴重な時間を過ごすことができます。長い歴史と穏やかな環境、そして歴史の中で育まれてきたさまざまな出来事が、大磯の地と調和し、地域の方はもちろんこの町を訪れる人々を温かく迎えています。

元々は真言宗の寺院として開かれ、日蓮宗へ改宗した後も真言宗の名残を感じることができ、真言宗と日蓮宗が混ざり合ったとても珍しい寺院です。また宗派のミックスだけでなく、神社とも関係があり、寺院では珍しい鳥居が立ち稲荷信仰の御利益を受けることができます。

寺院では、ヨガや体操教室なども無料開放され、境内には接骨院も隣接するなど、地域住民の健康維持にも貢献しています。身体と心、どちらのケアにも尽力し、地域の方々の心の拠り所となっている寺院です。

【妙輪寺 特別インタビュー】

妙輪寺は、地域の方が気軽に集える寺院として長くこの地で守られ続け、現在では体操教室などだけでなく、婚活者のための寺院としても開かれています。さらに境内にある天成会館という会館は、誰もが利用できるスペースとして開放され、過去にはイスラム教徒の方々が集うパーティー会場としても利用されるなど、仏教内での宗派だけでなく、異なる宗教とも交流しています。

700年以上前から寺院に伝わる占術を学ぶためのオンラインスクールの開講や、仏画入りの御朱印など、実に多くの魅力に富んだ妙輪寺の魅力をたっぷりと語っていただきました。

日蓮宗の香りを残す寺院。アメリカ育ちの住職が語る数々の魅力。

編集部

本日は、神奈川県大磯町に鎮座されている妙輪寺様へのインタビューです。まずは、こちらの創建の歴史などからお聞きできますか。

妙輪寺(みょうりんじ)は、神奈川県大磯町にある、創建が真言宗期にさかのぼる、約700年前に日蓮宗へ改宗したお寺です。真言宗時代の記録が欠けているため正確な年代は断定できませんが、少なくとも700年以上の歩みを重ねてきました。改宗の折には、日蓮聖人の孫弟子にあたる高僧・日輪上人が当地を訪れ、当時の住職と法論を交わしたのち、住職自らが日輪上人に寺を譲り弟子となったという伝承が今に伝わっています。寺号「妙輪」の「輪」はこのご縁にも通じ、教えが円くめぐる場所でありたいという願いが込められています。

編集部

非常に長い歴史がある寺院ですね。寺院が所在するのはどういった場所でしょうか。

所在地は“湘南”として親しまれる大磯です。海まで徒歩1分という希少な環境で、潮風の香り、波の音が日常のBGMです。観光地のにぎわいと、寺の静けさが同居するロケーションは、散策やお参りの合間に心身を整えるのに最適です。

編集部

湘南の海が目の前に広がるロケーションなんですね。清々しい海の空気を感じながら心を落ち着かせることができそうです。

私は第七十世住職として、祖父・父から続く三世代でこの寺を護持してきました。時代が変わっても「地域に開かれた祈りの場」であることを大切に、法要・祈願・ご相談などに丁寧にお応えしています。

編集部

では、寺院の魅力や特徴的な部分についてお聞かせください。

1836年(天保7年)、大磯の町は大火に見舞われ、妙輪寺を含む十一ヶ寺が焼失したと伝わっています。現在の本堂はその後、明治末に再建されたものです。築100年を超える建物ですが、歴代住職が大切に手入れを重ね、内部は必要に応じて改修してきました。歴史の趣はしっかり残しつつも、古臭さは感じにくい——いわば「古いけれど新しい」本堂です。

編集部

火災に遭いながらも、再建された建物を大切に守って来られたんですね。

もう一つの特徴は、“元・真言宗”の歴史を持つ日蓮宗寺院であることです。宗派が変われば儀式や祀る神様も変わるのが一般的ですが、当山には真言宗ゆかりの神様も今に伝わっています。また、伝統行事の一部には真言由来の作法や節回しが残ることがあります。もちろん、現在の通常の法要・祈願は日蓮宗の作法で厳修しますが、妙輪寺ならではの行事では、歴史に根ざした要素が自然に“ミックス”されることもあります。宗派の垣根を越えて受け継がれてきたハイブリッドな文化は、当山の大きな魅力のひとつです。

編集部

真言宗の寺院だった頃の名残も大切にされているんですね。元々違う宗派だったという寺院様はたまにお聞きしますが、当時の名残が残っているというお話はあまり聞きませんので、とても珍しいと思います。

そして、妙輪寺が他寺と大きく異なる最大のポイントは、米国ルーツの住職が務めていることです。先代住職は国際布教のため長年アメリカの寺院で活動しており、その流れを受けて私はアメリカ育ちという異色の経歴を持ちます。さらに、米国の医学部で学んだ現役の医療従事者でもあります。このバックグラウンドにより、妙輪寺は仏教と医療の視点を橋渡しできる寺院として、全国的にも珍しい存在となっています。そのため境内の空気感や情報発信は、伝統を大切にしながらもわかりやすさ・開かれた雰囲気を重視する“アメリカナイズ”が特徴です。英語での案内にも対応でき、海外の参拝者や地域の国際的な来訪者にも安心してお参りいただけます。

編集部

海外でのバックグラウンドをお持ちなんですね!現在はインバウンドの方も多くいらっしゃるでしょうし、英語で対応できるご住職がいることは訪れる方にとっても安心できる要素かと思います。

法要は日蓮宗の作法で厳修しつつ、説明やご相談では科学的な視点と仏教的な智慧の双方を大切にし、心身の不調や生活の悩みについても具体的で実用的な言葉で寄り添うよう努めています。

編集部

さまざまな角度からご説明を聞ける魅力があるんですね。とても頼りになる御住職様だと思います。

妙輪寺の魅力は、歴史・環境・物語の三つが自然に調和している点です。改宗史が語る“学び合いの精神”、湘南の海辺が育む“おおらかな空気”、そして家々の暮らしに寄り添ってきた“地域の記憶”。どれもが特別な装いではなく、日常の中で静かに息づいています。観光でふらりと立ち寄る方にも、人生の節目で祈りを捧げる方にも、肩の力を抜いていただける、そんな場所であり続けたいと思っています。

境内にはなんと“接骨院”も。地域住民の「心身の健康」を支える。

編集部

では、寺院建築において特徴的な部分はありますか。

妙輪寺の境内には、寺院では珍しい鳥居が立っています。ここは稲荷堂で、日本三大稲荷の一つとされる最上稲荷(岡山県)を古くからお祀りしています。妙輪寺は最上稲荷の湘南支院として、ご祈願やご供養を通じて関東のみなさまに稲荷信仰のご利益(家内安全・商売繁盛・事業成就・五穀豊穣・交通安全 など)をお届けしています。

鳥居の画像
編集部

寺院で鳥居とは確かに珍しいですね!寺院へお参りに来て、神社の雰囲気も味わえる場所ですね。

寺院の作法で厳修しつつ、お稲荷さまの力におすがりするという点では神社に近い面もあり、「仏さまとお稲荷さまの両輪」でお参りいただけるのが特徴です。とくに初午(はつうま)や毎月の縁日には、個別のご祈願・御礼参りの受付も行っています。もう一つの特長として、境内に医療施設「妙輪寺接骨院」があります。檀信徒の方はもちろん、地域のみなさまの日常の不調に幅広く対応しています。

整骨院の写真
編集部

境内に接骨院があるんですね!本当に聞けば聞くほど、こちらの寺院ならではのお話ばかりで驚きます。接骨院では専門のお医者様が施術されているのでしょうか。

住職は医療系の学校の先生もしており、妙輪寺接骨院の院長は住職の教え子です。彼は昨年に僧侶の資格も取得しました。現在は院長兼僧侶として、からだのケアと心のケアの両面から寄り添う体制を整えています。「身体」と「心」と「祈り」が一つの境内でつながっている、それが妙輪寺接骨院の大きな特徴です。

編集部

院長様も僧侶の資格をお持ちなんですね。この寺院を訪れれば、心身どちらの悩みも解決できそうです。

また、境内には天成会館という会館があります。もともとは葬儀の斎場として建立されましたが、現在はどなたでも利用できる多目的スペースとして開放しています。地域の集まり、勉強会、文化行事、子ども向けイベントなど、用途はさまざまです。過去にはイスラム教徒の方々のパーティー会場としてもご利用いただき、宗教や文化の垣根を越えて集える場であることに手ごたえを感じています。

天成会館

目指すのは「通えるお寺」仏画入りの御朱印も評判。

編集部

では、地域の方との交流についてお聞きできますか。

妙輪寺は、地域の暮らしに寄り添う「通えるお寺」をめざしています。私のモットーは「健康で長生きこそ、最高の先祖供養」。その考えから、本堂でのヨガ・体操・太極拳教室を週に2回ほど無料開放しています。初心者やご年配の方でも無理なく参加できる内容で、多くの檀信徒や地域住民が参加されています。

ヨガ教室
編集部

「通えるお寺」いいですね。特に若い方は、日ごろ寺院に馴染みがないという方もいらっしゃると思いますし、そういった試みをしていただけると「お寺へ行ってみようかな」という気持ちになると思います。

教室のあとに境内の「妙輪寺接骨院」で腰や肩のケアを受け、最後にお墓参りをして心身を整える――そんな半日コースが地元の定番になりつつあります。からだ・こころ・祈りが同じ境内で完結する点は、地域に開いた寺としての大きな強みです。

編集部

こんなにもさまざまな取り組みをされている寺院が身近にあったら、とても興味が湧くと思います。訪れて楽しめる、そして安らげる寺院ですね。

また、妙輪寺は御朱印でも知られています。先代住職が仏画入りの御朱印を授与したことが始まりです。

御朱印

私も先代のように御朱印に仏画を描くようになったのですが、それがSNS等で取り上げられて、御朱印を授与してもらうための列が一時は100名以上となってしまいました。今は住職の弟子が代わりに御朱印を描くようになり、私が描く御朱印は特別な行事日に限り対応しており、混雑を避けるために授与時間の案内や整理の方法を事前にお知らせしています。

ご住職

このように、妙輪寺は健康づくり・学び・ご供養の三つを軸に、地域の皆さまと顔の見える関係を育んでいます。ふだんの散歩がてらに立ち寄れる、困ったときに相談できる、家族で行事を共有できる、生活に根づく拠点として、これからも場を開き続けてまいります。

占術のオンラインスクールも開講。婚活者にも開かれた貴重な出会いの場。

編集部

他にこの寺院ならではのお話はありますか。

妙輪寺には、700年以上の歴史を持つ占術法(占い)があります。秘伝であったため長らく外部には公開されていませんでしたが、先代住職の時代から少しずつ世に出し、私の代でようやく外部公開となりました。

編集部

占術にも精通していらっしゃるんですね。700年以上というと創建当時から伝わるものかと思います。歴史ある占術を公開されていること、素敵だと思います。

妙輪寺の占術でより多くの人々を救いたいという思いから、書籍の執筆や講習会も行ってきました。多くの占い師の方々が学びに来寺されましたが、対応しきれないため、現在は妙輪寺の公式サイト内に無料の公開講座を設けています。さらに深く学びたい方向けには、サイト上で受講できるオンラインスクールも開講しています。通学の負担がなく、ご自身のペースで学べるのが特徴です。

編集部

オンライン講座があれば遠方の方でも学べるのでいいですね!

妙輪寺はIT化が進んだ寺院で、さまざまなオンラインスクールを運営しています。その多くは海外向けですが、この占いのオンラインスクールは、妙輪寺が手がける講座の中でも数少ない日本語での提供となります。

編集部

他にも講座を開講されているんですね。コロナ禍をきっかけにオンラインコミュニケーションはとても進みましたから、とても時代に合った試みだと思います。

また、妙輪寺ではお寺の婚活「てらこん」というイベントを開催しています。不定期開催の本堂でのご縁会で、登録済みの方々の中から相性の良さそうな組み合わせを寺が少人数でお招きし、落ち着いた雰囲気の中でご交流いただきます。婚活業者ではありませんので、登録料・参加費はいただいていません。宗派や信仰の有無は不問で、参加条件は独身であること、互いに敬意をもって交流できることのみです。事前に簡単なアンケートで希望や配慮事項をお伺いし、当日は本堂での作法のご案内と対話の時間を設けます。個人情報とプライバシーの保護を最優先に、「少人数・短時間・連絡は本人同士で」という基本方針で運営しています。

編集部

婚活事業にも着手されているんですか!地域の方との出会いの場だけでなく、運命の人を見つられるかもしれない場にもなっているんですね。冒頭のお話からここまで、全てがこの寺院にしかないものでお聞きしていて楽しいです。

妙輪寺は海から徒歩1分の場所にあり、開創以来700年以上にわたり地域の海上安全を祈ってきた寺院です。沿岸の暮らしとともに歩んできた歴史があり、今も「海が穏やかでありますように」という願いは境内の大切な祈りの柱になっています。水の守護神として知られる八大龍王(龍神)をお祀りしているのも、その歩みのあらわれです。八大龍王は海や川の安全を守る存在とされ、出漁や浜の行事の前後には、無事を願う祈願が行われます。私の代になってからは、祈りをさらに実際の海へ届けるために船舶免許を取得し、自ら操船して沖へ出て安全祈願を行っています。余談ですが、湘南の海は時に荒れるため、祈願を終えたあとは住職が船酔いでぐったりしていることもあります。そんな人間味のある一面も、妙輪寺が海と共に生きてきた証しとして地域の方々に親しまれています。

今後の展望

妙輪寺は、真言宗と日蓮宗の歴史を受け継ぐ「教えのハイブリッド」であると同時に、日本とアメリカの文化をつなぐ「国際的な寺院」へと歩みを進めています。現在は海外からの参拝や相談も増えており、国際布教を積極的に展開しています。その流れの中で、日本の僧侶を志す外国人の方々も現れはじめたため、外国人沙弥(僧侶の見習い)の受け入れを進め修行の機会を提供しています。目指すのは、国や宗教的背景を問わず、だれもが心を落ち着け、学びを持ち帰れる「グローバルなお寺」です。     

妙輪寺は「地域に開かれ、世界にも開かれた寺院」として、静かに心を整えたい方、学びを深めたい方、祈りを捧げたい方の拠り所であり続けます。どの国の方にとっても分かりやすく、安心して訪ねられるお寺を目標に、準備を一歩ずつ進めてまいります。

インタビューまとめ

今回は、実に多くの「この寺院ならでは」のお話を聞くことができました。アメリカにルーツを持つご住職、その経験を活かした布教活動や医療従事者としての知見を活かした地域の方々のサポートなど、どのお話を聞いても寺院に関連するお話とは思えないほど、あらゆる魅力がある寺院です。

眼前に海を望む貴重なロケーションは、地域の方にとって誇りであることはもちろんですが、大磯町を訪れる方にとっても「この場所に来て良かった」と思えるロケーションではないでしょうか。

宗派の融合、そして国と宗教の融合など、あらゆる「垣根」を超えたこの妙輪寺でしか体験できないことがきっとたくさんあります。湘南へ足を運んだ際には、ぜひ妙輪寺で心を落ち着け、心洗われる体験をしてみてはいかがでしょうか。

妙輪寺 アクセス情報

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この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

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